誰も僕を知らない街

作詞作曲:竹川真魚 編曲:日向村役場

午後九時過ぎの高速バスの中は
すっかり静かになって
田舎でも都会でもない街の横顔を
ぼんやりと見ていた

ヘッドホンから漏れ出した 僕の知らない派手な音楽と
退屈が生み出した貧乏ゆすり
流れるヘッドライト ビールの匂い
時速80kmで僕は進む

あとどれくらいで着くのだろう
誰も僕を知らない街
ずっとこうしてバスに揺られていたい
僕は今誰でもなくて誰にでもなれるんだ

午前1時過ぎに高速バスは
巨大なサービスエリアに入った
重たい目をこじ開けて
3月の冷たい空気を吸う

煌々とした店内で 土産物を選ぶ人たち
誰に届けるのかな
いったいどこへ帰るんだろう
振り返ったって誰もいない

もうどれくらい離れたんだろう
僕の言い訳で染まった街
いつかこの道を戻る日が来るなら
小さな胸を張って帰れるといいな

午前6時過ぎ高速バスは
静かなおきぬけの街に着いた
名前も知らない人たちと
僕は歩き出す
誰も僕を知らない街